2026年6月15日、厚生労働省とこども家庭庁は、来年度(2027年度)の障害福祉サービス等報酬改定に向けた関係団体ヒアリングをスタートしました。8月までに計53団体から幅広く意見を聴取し、今夏中に論点を整理する方針です。
今回のヒアリング開始は、単なる行政手続きではありません。人材不足・物価高騰・基本報酬の低さという三重苦が重なる障害福祉の現場が、制度改革に向けて声を上げる重要な機会です。この動きが、グループホームや相談支援、就労支援などを利用するご本人やご家族にとって、どのような意味を持つのか。また、福祉事業者はこの改定議論をどう読み解けばよいのか。今回はその全体像を整理します。
📌 目次
📋 2027年度障害福祉報酬改定とは?ヒアリング開始の背景
障害福祉サービスの報酬(サービスに対して国や自治体が事業所に支払う単価)は、3年に1度、改定されます。直近では2024年度に改定があり、次の改定は2027年度(令和9年度)が見込まれています。
今回、厚生労働省とこども家庭庁は「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」を設置し、2026年6月15日を皮切りに関係団体へのヒアリングをスタートしました。グループホーム、就労支援、相談支援、障害児支援など、障害福祉に関わる全国の事業者・当事者団体・関係機関、計53団体から意見を聴き、2026年8月までに論点を整理する方針です。
なぜ今、この議論が注目されるのでしょうか。背景には、障害福祉の現場が直面する構造的な問題があります。
⚠️ 現場が訴える3つの危機感
初日のヒアリングに出席した8団体からは、共通する3つの危機感が噴出しました。
① 他産業の賃上げに追いつけない人材不足
近年、製造業や小売業、IT業界では賃上げが続いています。障害福祉の現場でも処遇改善加算が拡充されてきましたが、他産業との賃金差は縮まっていないのが実情です。その結果、福祉職を選ぶ若者が減り、現場では深刻な人手不足が続いています。
特にグループホームや訪問介護・訪問看護の現場では、夜間支援や医療的ケアの担い手確保が難しくなっており、サービスの維持そのものが課題になっている事業所も少なくありません。
② 長引く物価高騰による経営圧迫
光熱費、食材費、消耗品などのコストが上昇し続けています。障害福祉サービスの報酬単価は法令で定められているため、民間企業のように価格転嫁することができません。収入の上限が固定されたまま支出が増え続ける構造は、特に中小・小規模事業者にとって深刻な経営リスクになっています。
③ 基本報酬の低さと事務負担の重さ
各団体からは、基本報酬の引き上げを求める声とともに、処遇改善加算や各種加算の申請・事務作業が煩雑すぎるという指摘も相次ぎました。加算を取得するために必要な書類作成や記録業務の量が増え、現場の支援に使える時間が削られているという声は、多くの事業者が共通して感じている課題です。
こうした現場の声を受けて、厚労省とこども家庭庁は「制度の持続可能性」「過不足のないサービス提供体制の整備」「サービスの質の向上」という3つの視点を持ってヒアリングを進めていく方針を示しています。
👨👩👧 報酬改定が利用者様・ご家族に与える影響
「報酬改定」と聞くと、行政や事業者の話と感じるかもしれません。しかし、その内容は利用者様やご家族の暮らしに直接つながっています。
報酬単価が適切に見直されることで、事業所が安定した経営基盤を持てるようになり、支援の質が維持・向上されやすくなります。逆に、報酬が実態に見合わない水準にとどまれば、事業所が閉所・縮小するリスクがあり、利用者様の住まいや支援の場が失われる可能性があります。
また、処遇改善加算の拡充が実現すれば、現場の職員にとってもより働き続けやすい環境になります。職員が安定して働けることは、支援の継続性と質の向上に直結するため、利用者様にとっても大きなメリットです。
🏢 福祉事業者・グループホーム運営者にとっての意味
今回のヒアリング開始は、事業者にとっては「自社の声を届けるプロセスが始まった」ことを意味します。同時に、改定の方向性を見越した経営戦略の見直しを始める契機にもなります。
- 基本報酬の見直し動向:引き上げが実現すれば経営の安定化につながります。一方で、サービスの質に関する要件が強化される可能性もあります。
- 処遇改善加算の動向:加算体系の見直しや統合・簡素化が議論される可能性があります。現行の加算取得状況を整理し、今後の変化に備えておくことが重要です。
- 事務負担の軽減:記録・申請業務の簡素化が進む可能性があります。DXやICT活用による業務効率化を先行して進めておくことで、改定後もスムーズに対応できます。
🗾 札幌・北海道の障害福祉現場にとっての意味
北海道は広大な地域にわたって事業所が点在しており、都市部と地方では人材確保や事業運営の環境が大きく異なります。札幌市内でも、特にグループホームや訪問系サービスの事業所は、物価高騰と人手不足のダブルパンチを受けやすい状況です。
今回の報酬改定議論では、地域の実情に応じた報酬単価の設定や、離島・過疎地域への特別な配慮が求められる声も上がっています。北海道の事業者や関係者にとっても、この議論は他人事ではありません。
また、北海道内では福祉人材の養成・確保が依然として大きな課題です。処遇改善加算の拡充が実現すれば、福祉職の魅力が高まり、地域内での人材循環につながる可能性があります。
🐾 わおん北海道の視点
株式会社わおん北海道は、札幌を中心に障がい者グループホーム・訪問看護・訪問介護を展開し、保護犬・保護猫と共に暮らせるペット共生型グループホームの運営にも取り組んでいます。
今回のヒアリングで繰り返し語られた「人材不足」「物価高騰」「事務負担の重さ」は、私たちも現場で日々感じている課題です。支援の質を守りながら事業を継続するためには、報酬制度の実態への対応が不可欠であり、今回の議論の行方を真剣に見守っています。
わおん北海道では、こうした状況に対応するため、kintoneをはじめとするICTツールを活用した記録業務の効率化、AIを活用した業務改善に継続的に取り組んでいます。記録や事務の負担を減らすことで、職員が利用者様との関わりにより多くの時間とエネルギーを使えるようにすることが目標です。
「安心して暮らせる居場所をつくる」というミッションを持続的に果たすためにも、制度的な基盤の整備は欠かせません。ヒアリングを通じて現場の声が政策に反映され、利用者様にとっても事業者にとっても前向きな改定が実現することを願っています。
✅ 今日から意識できる実践ポイント
利用者様・ご家族の方へ
- 現在利用中のサービス事業所が、安定した運営を続けているかどうかを日頃から確認しておきましょう。
- 相談支援専門員や事業所スタッフに、制度の動向について気軽に質問してみることも大切です。
- 報酬改定の動向は、厚生労働省・こども家庭庁のウェブサイトや福祉業界メディアで随時確認できます。
福祉事業者・グループホーム運営者の方へ
- 今夏に論点整理、秋から具体議論というスケジュールを把握し、情報収集の体制を整えておきましょう。
- 現行の加算取得状況と職員処遇の水準を棚卸しし、改定後に対応が必要な部分を事前に把握しておくことをおすすめします。
- 記録・申請業務のDX化・ICT化は、事務負担軽減だけでなく、報酬改定後の新たな加算要件にも対応しやすくなる準備として有効です。
- 所属する業界団体を通じて、ヒアリング内容や論点整理の情報をいち早くキャッチアップするルートを確認しておきましょう。
📝 まとめ
2027年度障害福祉サービス等報酬改定に向けたヒアリングが、2026年6月15日に正式にスタートしました。計53団体から意見を聴き、今夏中に論点を整理、秋から具体議論へと進むスケジュールです。
現場からは「人材不足の深刻化」「物価高騰による経営圧迫」「基本報酬の引き上げと事務負担の軽減」という3つの課題が強く訴えられています。これらは、障害福祉サービスを利用するご本人・ご家族にとっても、サービスの継続性・質に直結する重要なテーマです。
報酬制度の動向は、私たちのような福祉事業者が安定した支援を届け続けられるかどうかに大きく影響します。わおん北海道では、こうした制度の変化を注視しながら、ICT活用や業務改善を通じて、利用者様が安心して暮らせる居場所づくりを続けてまいります。
