障害福祉現場に迫る「日本版DBS」🔍 性犯罪歴確認が変える採用と支援の質
2026年12月25日、「こども性暴力防止法」、通称「日本版DBS」が施行されます。児童発達支援や放課後等デイサービスなど、こどもと接する障害福祉の現場では、職員の性犯罪歴確認が義務化される、大きな制度変更です。
「うちは成人向けのグループホームだから関係ない」と感じる事業者の方もいるかもしれません。しかし、この制度が問いかけているのは、性犯罪歴の確認手続きそのものだけでなく、「利用者様の安全をどう守るか」という、障害福祉に携わるすべての事業者に共通するテーマです。今回は、こども家庭庁が解説した最新情報をもとに、この制度が現場・利用者様・ご家族・事業者にどのような影響を与えるのかを、わおん北海道の視点も交えて考えてみます。
📌 目次
📰 今回取り上げるニュース
今回ご紹介するのは、介護ニュースJointに掲載された「【施行まであと半年! こども家庭庁が解説】日本版DBS、障害福祉現場のこども性犯罪の事実確認と必要な準備について」という記事です。
こども家庭庁の担当参事官による寄稿で、2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法」の内容と、障害児福祉の現場に与える影響、事業者が準備すべきことが具体的に解説されています。連載企画の2回目にあたる記事で、1回目では法律制定の背景や義務対象事業者の全体像が示されていました。国が半年以上前から、事業者向けに実務レベルの解説記事を連載で出していること自体、現場の準備負担の大きさを物語っています。
🧩 「日本版DBS」とは何か
イギリスの制度になぞらえて「日本版DBS」と呼ばれるこの仕組みは、こどもと接する業務の従事者について、雇入れや配置転換の際に過去の性犯罪歴を確認するものです。対象となる犯罪には、不同意性交、盗撮、児童ポルノの所持、痴漢などが含まれ、こどもに対するものだけでなく成人に対するものも対象になります。
確認の対象は、管理者や児童指導員など報酬算定の対象として法令上規定されている職員は一律対象で、正職員だけでなくアルバイトやパートも含まれます。一方、事務職員や送迎バスの運転手などは、こどもと接するかどうかという業務実態を踏まえて、事業者が個別に判断する形になっています。
| 職種区分 | 確認対象になるか |
|---|---|
| 管理者・児童指導員など報酬算定対象職員 | 一律対象(正職員・アルバイト・パート含む) |
| 事務職員・送迎バス運転手など | 業務実態を踏まえ事業者が判断 |
注目したいのは、確認の対象が「こどもに対する性犯罪」だけでなく「成人に対する性犯罪」も含む点です。これは、対象となる犯罪歴があること自体が、支援対象を問わず利用者様との信頼関係を根本から損ないかねない、という考え方の表れだと読み取ることができます。
🔄 確認手続きの流れ
手続きの大まかな流れは、次のとおりです。
- 事業者からこども家庭庁に、従事者の性犯罪歴のチェックを依頼する。
- 従事者本人が、こども家庭庁に戸籍情報を提出する(基本的にマイナンバーカードを活用して取得する想定)。
- こども家庭庁が法務省に確認を行う。
- 法務省からこども家庭庁に回答が届く。
- 結果はまず従事者本人に通知され、事実と異なる場合は訂正要求が可能。その後、事業者に「ある」「なし」の形で回答される。
万が一、性犯罪歴があると判明した場合には、その従事者がこどもと接することがないようにする「防止措置」を講じることが事業者に求められます。手続きは施行後、専用システム(こまもろうシステム)を通じて行う想定です。従事者本人にまず結果が通知され、訂正要求の機会が設けられている点は、確認を受ける側の権利にも配慮した仕組みだと言えるでしょう。
✅ 事業者に求められる3つの準備
記事では、施行前の今のタイミングで事業者が取り組むべきこととして、大きく3つが挙げられています。
- 従事者への周知:制度の趣旨と、戸籍提出が必要になることを一人ひとりに丁寧に説明する。
- 募集要項・就業規則の見直し:性犯罪歴が判明した場合の内定取消しなどの防止措置を、あらかじめ書面等で明示しておく。
- 専用システムへの事業者情報登録:義務対象の障害児関係事業者は、都道府県取りまとめ担当への提出期限(7月31日)を守って登録する。
特に2つ目の就業規則見直しは見落とされやすいポイントです。内定取消しが有効と認められるためには、採用過程で性犯罪歴がないことを書面等で確認したり、内定取消事由をあらかじめ明示しておくといった事前対応が必要とされています。こども家庭庁からは、募集要項・求人票の参考例や誓約書・内定通知書、就業規則の参考例も示されており、これらを活用した準備が呼びかけられています。
また、従事者への説明では、単に「手続きが増える」という伝え方ではなく、「利用者様の安心のために業界全体で取り組む制度」であることを丁寧に伝えることが、職員の納得感につながります。突然の書類提出依頼は、説明が不十分だと不安や反発を招きかねないため、早めのコミュニケーションが重要です。
👨👩👧 利用者様・ご家族にとっての意味
障害のあるお子さまやそのご家族にとって、この制度は「安心して事業所に預けられるかどうか」を判断する材料の一つになります。
これまで、職員の採用時にどのような確認が行われているかは、外からは見えにくい部分でした。日本版DBSの施行によって、少なくとも性犯罪歴の確認という最低限のラインが、業界全体の共通ルールとして整備されることになります。
一方で、制度が対象とするのは主に児童福祉・障害児福祉の現場であり、成人の障がい者グループホームなど、すべての福祉サービスを網羅するものではありません。ご家族としては、制度の対象範囲を正しく理解したうえで、利用中・利用予定の事業所がどのような安全対策や職員教育を行っているかを、直接確認してみることも大切です。制度の有無だけでなく、日々の支援の様子や職員の対応の丁寧さも、事業所選びの大切な判断材料になります。
🏢 福祉事業者にとっての意味
障害児支援の義務対象事業者はもちろん、制度上の直接対象でない事業者にとっても、今回の動きは他人事ではありません。
虐待防止、権利擁護、運営指導・監査への対応は、指定基準や報酬改定の議論とも密接に関わる分野で、今後、成人の障がい福祉サービスにも同様の考え方が広がっていく可能性があります。採用時のチェック体制、就業規則の整備、職員研修の記録などは、義務化されるかどうかに関わらず、支援品質を左右する重要な基盤です。
特に相談支援や障害児支援と連携する事業者にとっては、連携先の制度対応状況を把握しておくことも、利用者様・ご家族への説明責任を果たすうえで役立ちます。また、採用フローの見直しは人材確保が難しい今の福祉業界において、応募者にとっても「安心して働ける職場」であることを示す機会にもなり得ます。透明性のある採用プロセスは、結果的に事業所への信頼にもつながっていきます。
⚖️ 人手不足と信頼構築の両立という課題
障害福祉・介護の現場は、全国的に人手不足が続いていると報じられています。そうした中で、採用時に確認事項や手続きが増えることは、事業者にとって負担に感じられる面もあるでしょう。
しかし、支援を必要とする方々と密接に関わる仕事だからこそ、採用の入り口で丁寧な確認を行うことは、結果として利用者様・ご家族・職員すべてにとっての安心につながります。人手不足だからと採用基準を緩めるのではなく、必要な確認はきちんと行いながら、働きやすさや教育体制の充実で人材を惹きつける、という両立が今後の福祉事業者に求められる姿勢だと言えるのではないでしょうか。
🐾 わおん北海道の視点
わおん北海道では、札幌市内で11棟・49居室の障がい者グループホーム、訪問看護、訪問介護、就労支援を通じて、利用者様が地域の中で安心して暮らせる環境づくりを大切にしています。相談支援との連携の中で、障害児支援に関わる場面も少なくありません。
私たちが大切にしている「心の五ヶ条」の一つに、「利用者の喜びは自分の喜びの糧である」という考え方があります。今回の日本版DBSのような制度は、まさに利用者様とご家族の安心を守るための仕組みであり、私たちの理念とも通じる部分があると感じています。
わおん北海道でも、職員採用や日々の支援において、権利擁護・虐待防止の視点を欠かさないこと、そして保護犬・保護猫と共に過ごすアニマルセラピーを通じて、利用者様・職員双方が安心できる関係性を築くことを重視しています。事業所内を常に清潔に保ち、心を込めて支援を届けるという運営指針も、こうした信頼の積み重ねの上に成り立っています。kintoneを活用した個別支援計画やモニタリングの電子化も、支援の記録を透明にし、振り返りやすくするための取り組みの一つです。制度の有無にかかわらず、支援に携わる者としての責任を、日々の姿勢の中で示していきたいと考えています。
💡 今日から意識できること
- ご家族の方は、利用中・検討中の事業所に採用時の安全対策について気軽に聞いてみる。
- 事業者の方は、義務対象かどうかにかかわらず、就業規則や採用フローを一度見直してみる。
- 相談支援に関わる方は、連携先の制度対応状況を把握し、必要に応じて情報共有をする。
- 職員の方は、制度の背景にある「利用者様を守る」という目的を、日々の支援の中で意識する。
📝 まとめ
2026年12月25日に施行される日本版DBSは、障害児福祉の現場を中心に、職員の採用・配置における性犯罪歴確認を義務づける大きな制度変更です。執筆時点で確認できる範囲では、義務対象事業者は7月31日までの情報登録や、就業規則の見直しなど、施行前からの準備が求められています。
直接の義務対象でない事業者にとっても、権利擁護や虐待防止の視点を改めて見直すきっかけとして捉えることができるテーマです。わおん北海道も、利用者様・ご家族が安心して過ごせる環境づくりを、これからも大切にしていきます。
